2008年6月4日〜7日 ASTRA TECH WORLD CONGRESS 2008
2008年6月4日〜7日までの3日間にわたりアメリカ、ワシントンDCで第二回 Astra Tech World Congress が開催されました。 2006年にアメリカ、ニューヨークで開催された第一回Astra Tech World Congressに続いて今回は2回目になります。
ASTRA TECH WORLD CONGRESS 2008 概要
会場のGaylord National Resort and Convention Center は完成したばかりで周辺施設はまだ一部建設中ではあるものの、アメリカらしいスケールの大きい巨大な複合施設として設計されており、世界各国から2300人が、その内日本からは45名が参加しました。
今回、筆者はPre - congress に参加するため6月2日に現地入りしました。 Pre - congress は6月3日に16のコースが用意されており全体で500人が参加。筆者とOSI Study Club 会長の松川真敏先生はDr Mauricio Hervas と Dr IraSy の Immediate Placemen - immediate load Hands onコースに参加しました。
コース参加者は筆者たちを含めて15名で講義と埋入実習もありました。
内容として、上顎前歯部審美領域における抜歯即時埋入はドリリング起始点を口蓋側に設定し、Fixture は13mm 以上を使用し埋入時のトルクによって術式を考慮。
- 15Ncm 以下 Two Stage
- 20-30Ncm One Stage
- 35-45Ncm Immediate Load
またこの日はCongressを翌日に控えているため日本からの参加者も続々と現地入りし、アストラテック株式会社 岩井賢吾社長の御厚意で日本人参加者のためにジャパンナイトパーティーが開催され、スタディークラブの垣根を超えた親睦をはかることができたことは非常に有意義でした。
6月5日のコングレス1日目
アストラテックデンタルCEO Peter Selley氏の挨拶を最初に、8名の著名な演者達が講演するファーストセッションが始まった。
Jan Lindhe教授がモデレーターをつとめ、The BioManagement Complexのテーマでアストラテックインプラントシステムの卓越した特徴について講演されました。
MicroThreadのデザインを決定するために840種類のスレッドをテストしたことや、Conical Seal Designはマイクロギャップが無いため炎症性細胞の浸潤がほとんど無く、またConnective Contourがあるため軟組織獲得に有利な状態になり、アバットメントに2mmの上皮と1.5mmの結合織の付着が形成されると述べられた。
またこのセッションでは以下の新製品の紹介も行われました。
- OsseoSpeed 4.0S - 6mm
現在、メーカー各社が市場投入しているショートインプラントで、直径4.0mm、長さ6.0mmのもので主に萎縮した下顎臼歯部において使用する。 - OsseoSpeed 3.0S 11, 13, 15mm
このフィクスチャーは主に下顎切歯と上顎側切歯での使用を想定した直径3.0mmのナローインプラントで回転防止機構を持ったTwo - piece インプラント。 - ATLANTIS
スキャニングした模型から最終補綴物の形態を3Dでイメージして理想的なアバットメントを作成するシステム。アバットメントはジルコニア、チタン、ゴールド色のチタン(TiN)に対応可能。
また今回、大半のプレゼンテーションでOsseoSpeedが使用されており、日本以外の主要国ではすでに日常的に使用されているにも関わらず、日本においては未だ認可がおりないというのは理解に苦しむところであり、早期の認可を望みたいところです。
6月6日のコングレス2日目
2日目は Jan Lindhe 教授のPlacement of in the extraction socket の講演で始まりました。
人や犬での研究では抜歯即時にインプラントを埋入しても歯槽骨(特に唇側)の吸収は防げません。したがって抜歯後2ヶ月での待時埋入が推奨され、骨吸収の予測がつきにくく結果的に審美的に障害が出る可能性がある抜歯即時埋入には慎重にならなければならないと述べられました。
次にDennis P Tarnow教授 の講演が始まりました。以前より、教授はエクスターナルタイプのNo Platform Switch のインプラントについて水平的骨吸収がインプラントショルダーから片側につきそれぞれ1.3mm と1.4mm生じるため、インプラント間の骨頂の垂直的骨吸収を少なくし、歯間乳頭を維持するためにはインプラント間の距離が最低3mm以上必要であると報告していたが、Platform Switchのものは水平的骨吸収がインプラントショルダーからそれぞれ0.6mmであるので3mm以下で歯間乳頭(骨頂)が維持できる可能性を示唆されました。
また上顎前歯部審美領域の治療計画はなるべくポンティックを用いる、たとえば上顎側切歯間4歯欠損のケースは両側側切歯にインプラントを埋入し、中切歯はポンティックにする、また片側中切歯側切歯2歯欠損症例では中切歯にのみインプラントを埋入し、歯間乳頭を保存するためにあえて片側のホープレスの側切歯を保存しインプラントと連結してポンティックとして使用した症例も提示されました。
午後からはパラレルセッションがあり、筆者はイエテボリ大学Tord Berglundh 教授のPeri - implantitis - characteristics and prevalenceの講演を聞きました。
インプラント表面性状とペリインプランタイティスについての関係を検討するために、人為的にperi-implantitisを発症させた研究で、Rough Surface(SLA)とSmooth Surface(機械研磨よりさらに平滑にしたもの)の比較では有為にRough Surface(SLA)でperi-implantitisの進行が顕著であり、さらにSLA、TiOblast, TiUnite, Turnedの 比較ではとくにTiUniteにおいてその進行が顕著であったと報告されていました。
Microの表面性状を持つRough Surface Implant 全盛の現在において、そのような結果が報告された事は筆者にとって考えさせられる事が多く、未だインプラント歯科学は未解明かつ未解決の部分も多く、当然万能ではなく、基本に忠実で科学的根拠にもとづいた考え方が重要だと再認識した講演でした。
6月7日のコングレス最終日
3日目はClosing Session で優秀発表賞の授賞式が行われた後に、Jan Lindhe教授, Tomas Albrektsson教授、Peter Selley CEOらのコメントがあり3日間の盛大なcongressの幕を閉じた。
最後にPre-congressも含めて四日間のCongressが終了し、世界各国の著名な演者らの131の講演と138のポスター発表があり大変盛大で有意義なcongressであったが、いくつかのセッションが平行して同時進行で行われていたので、すべての講演をきくことができず残念でした(後日DVDが発売されるとHPに記載あり)。
また今回は日本人演者として九州歯科大学第二口腔外科 高橋哲教授、大阪市開業 河村達也先生、芦屋市開業 野阪泰弘先生らが講演された他に3名のポスター発表もあり評価も非常に高く、今や日本のインプラント歯科学は世界的に見ても高いレベルにあると言う事が認識できました。
次回は2010年にアメリカ、ラスベガスで開催される予定です。
ASTRA TECH WORLD CONGRESS 2008
Pre-Congress 会場の前 右がOSI Study Club会長 松川真敏先生、左が筆者 |
Congress前日に行われた日本人参加者の為のパーティ |
初日の熱気あふれるメイン会場 | 今回参加したOSI Study Clubのメンバー 右から筆者、 OSI東京主幹 寺西邦彦先生、寺西晃子先生、 OSI沖縄主幹 金城清一郎先生、 OSI Study Club会長 松川真敏先生、 盛岡市開業 藤野修先生 |
カンファレンスの合間にオイスターの昼食 右が金城清一郎先生、左が筆者 |
右より筆者、Tomas Albrektsson教授、 |
カンファレンス終了後の打ち上げに OSI memberで訪れた シーフードレストラン |
カンファレンス会場の |
ASTRA TECH WORLD CONGRESS 2008 レポート著者 |
OSI Study Club 大阪支部長 |